医学生の頃、バリバリの美容形成手術見学にボストンの病院を訪れました。
脂肪切除、豊胸術、隆鼻術、フェイスリフトなどなど、毎日ダイナミックな手術に入らせていただいて、実際に患者さんに触らせていただいたりして、この上なく興奮したものです。
私も絶対美容外科医になると自分の進路を決めた瞬間、24歳の出来事でした。
恥ずかしながら、人を幸せにしたいというような崇高な動機ではなく、「カッコいいから」という自己中心的な向上心のみで突き動かされていました。
20代後半、北里研究所病院で美容形成外科研修を始めます。
相変わらず自分本位な欲望で仕事に励んでおりました。
ほとんど未経験なのに、「手術させてください」と病院内のお医者さんたちにビラを配っていたのですから、無鉄砲ですよね。若さって怖いもの知らず。
そんな私に心境の変化が訪れたのは、美容医療を受けに来院していた患者様たちの影響です。
とても知的で美しく、芯のある女性たちとの出会いでした。
立ち振る舞いだけでなく、物腰の柔らかな話し方と美しい言葉遣い、そして知的好奇心をそそられるような会話。
私もまだ若かったので、50代以上の女性たちから学ぶことがたくさんあり過ぎました。
書籍、映画、芸術、芸能から、どんな子供時代を過ごしていたのか、どんな恋愛をしていたのか、家族との向き合い方などなど。
仕事の話やお金の使い方まで教えて下さいました。
知らないことはメモを残して、後で調べて復習しました。
若かったので、記憶力が良かったせいか、患者様との会話内容がスポンジが水を吸収するように頭に入っていきました。※今はスポンジが水浸しで、全く吸ってくれません
「そうか、美容医療というのは、知的で上品な女性たちがより輝くことで、周囲に良い影響を与えるためのものなのかもしれない」と、初めて患者目線で考えるようになりました。
共通していることは、素敵な人達には、その心に人生の本質的な何かが宿っているということです。
それがなければ、上辺だけの薄っぺらな美容に過ぎず、それは応援したくないとさえ思ってしまいます。
当時の上品な患者様は、有難いことに今でも通って下さっています。
残念ながら亡くなった方もいらっしゃいますが、特に影響を受けた女性はお墓参りにも行かせていただきました。
見栄とはったりで医者を目指し、カッコいいという理由で美容外科医を志していた稚拙な私が、東京白金で17年間もクリニックを続けて来られたのは、「知性と品格ある」患者様に育てられたからです。
当院の存在意義・使命に「知性と品格ある大人のための美容クリニック」を掲げている理由はここにあります。
私自身はとても上品と言えないバンカラタイプなので、少しでも上品に振舞いたいという願いも込めています
社会を憂う前に、きちんとした大人でいたいと思います。