「肌断食」という言葉が登場したのはいつ頃だっただろうか。
仕事のために美容本に目を通していたら、肌断食をまったく理解していない人の本に出会った。
『何もしないから楽!リキッドファンデーションもメイク落としを使わなくていいから楽~。でもいい加減なスキンケアをしていたら肌がボロボロになったから、私には合わなかった。』などと書いてあった。さらにはその後、『ある無添加化粧品と出会い治りました。』だそうな。
うううっ・・・
リキッドファンデーションを使っていながら肌断食とは・・・
肌断食とは「何も塗らないこと。」であり、基礎化粧品も日焼け止めもファンデーションも塗らないことではないのか?
リキッドファンデーションは軽めのものは石鹸で落ちるが、落ちにくいものはクレンジングを使わなければ落ちないこともある。
そもそも石鹸洗顔で落ちないようなものを常用すること自体、皮膚に無理がある。ボロボロになって当然。
若いころはファンデーションなど塗らなかったはずなのに、いつの頃か洗脳されたようにファンデーションを塗るようになり、次第に塗らずには外出出来なくなっている人もいる。
まったく不健康な話である。
そして、クレンジングや洗顔フォームで根こそぎ洗い切った後、『乾燥する、つっぱる』と言ってやたらとベタベタ塗りまくる人がいる。ベタベタをしっとりと勘違いしている。
まったく不健康な話である。
このような化粧品中毒人生が長ければ長いほど、肌断食を成功させるまでには時間がかかる。
比較的肌状態が良い人は意外とすんなり成功できるが、悪い人ほど苦戦するものだ。化粧品なしではいられなくなってしまっているのだから。
私のクリニックでは、スタッフ全員ファンデーションは塗っていないが、私の目から見ても健康的な皮膚で自然にきれいだと思っている。隠せないから、日常生活では健康管理に気を付けるようになる。人工美は自然美に勝てない。
私自身に至っては肌断食はなく、「全身断食」でもある。シャンプーなし、洗顔石鹸もなし、ボディ石鹸もなしである。まさにお湯だけ。誠に快適である。わび・さびの世界。
「全身断食」を成功させるには、化粧品をはじめ化学物質の知識を持ち、その危険性をよく理解する必要がある。長い習慣を断ち切るストレスは大きいから、成功させることへの強靱な意思が必要。
さらには環境問題にまで踏み込んで考えられるか。合成洗剤は分解されにくいから、水質汚染に繋がるし、容器のゴミも馬鹿にできない。
不要なものは使わない、買わない。私は無駄が性に合わない。私の祖母も両親も節約家で、物を無駄にしない人たちだから、その根性が遺伝したのだと思う。
スキンケアの話は、専門家としてもっと発信しなければならないと思った。