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日本の伝統的な三色―赤の化粧
肌と化粧品
化粧にはその昔、おしゃれとして必要とされるほか、身分や年齢、未既婚などの女性の属性を示す機能がありました。社会的な美意識の変化とともに、身だしなみとしての化粧がなぜ広まっていったのか、化粧の歴史を見ながら考えていきたいです。
化粧文化の伝来
島国である日本は様々な文化を古代から文化の進んだ中国や朝鮮半島の人との交流を通して吸収してきたと言われています。
化粧の文化も大陸の影響を強く受けて日本へ入ってくるのですが、日本独自の化粧へとなるのは平安中期だそうです。宮廷文化が洗練される過程で、支配階級である貴族たちによって、白粉・紅・お歯黒・眉化粧などの、日本の伝統化粧の基礎が築かれました。
日本の伝統的な化粧に使われた色は、基本的に白・赤・黒の三色でした。
この三食は、西洋の化粧が日本に入ってくるまで、およそ千年以上にわたって日本の伝統化粧の基本三色になっていったと言われています。
赤の化粧
化粧についての最も古い文献は、日本では八世紀前半に成立した『古事記』『日本書紀』や、七世紀後半から八世紀後半の和歌を集めた『万葉集』などがあります。さらに古い資料を遡ると、中国の史書『魏志』倭人伝には、三世紀の日本人(倭人)の風俗が以下のように記されています。
朱丹(しゆ)を以って其の身体に塗る、中国の粉(おしろい)を用うるが如きなり
朱丹とは水銀朱(硫化水銀)などの赤い顔料です。
この文章から、顔や身体に白粉のように赤い顔料を塗る「赤の化粧」がこの頃より行われていたことが分かります。
また五、六世紀の古墳時代における人物埴輪には、目のまわりや頬などに赤い彩色を施したものが見られることから、古代人が儀式において、赤い色を顔に塗っていた習慣を埴輪にも反映していたと考えられています。
古墳時代の赤色顔料には、水銀朱やベンガラ(酸化鉄)などが使われ、これらの顔料は古墳の内装に使われているほか、棺に敷き詰められたり、死者の身体に塗ることもあったそうです。
赤色の意味
赤は太陽の色であり、あかあかと燃える火や、したたり落ちる血液を連想させる象徴的な色です。古代人にとって、赤は死者の魂を鎮め、その再生を願うなどの呪術的な意味を持つ神聖な色であったとされています。
またそれと同時に、顔を赤く彩色することは、生きている人間にとっての魔除けの意味があるそうです。
このことから、おめでたい日には赤い小豆を使ったお赤飯を炊き、小正月には小豆粥を食べて災いや病気などの邪気を払うという習慣が現在でも続いています。
参考文献
- 『化粧にみる日本文化』(著)平松隆円 株式会社水曜社 2020年
- 『化粧の日本史』(著)山村博美 株式会社吉川弘文館 2016年