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春の肌荒れから考える環境問題―黄砂④
肌と環境因子
これまで黄砂と関係して世界の砂漠化についてお伝えいたしましたが、肌と土壌は似ていると感じます。
前回お伝えしましたアメリカのダストボウルの原因と言われている化学肥料とトラクター(https://www.s-bac.com/hadarune/magazine/healthy/1636/)を、化粧品と過剰なスキンケアと考えるといかがでしょうか。
化粧水などによって、角質層がふやけ滑らかになり、その一瞬は潤った感じがしますが、また時間が経つと化粧品の水分は蒸発し乾燥しますし、徐々に炎症を引き起こしている場合があります。
またやりすぎたスキンケアや治療により、肌理がなくなり、取り過ぎた角質は本来のバリア機能を失い、カサカサ、ごわごわとした肌触りとなるばかりでなく、つるつるピカピカのカサ肌(ビニール肌)になる可能性もあります。
そして、ダメージを受けた肌は黄砂や花粉をはじめ、少しの刺激にも敏感になります。
肌理の凹凸がない肌は一見つるつるピカピカときれいに見えますが、凹凸に水分や皮脂をとどめることができず、常に化粧品でカバーしていないと乾燥します。
これは見た目に美しい肌だけを追い求めた結果の、肌の砂漠化ではないでしょうか。
一度劣化した土壌は、もとの状態に戻るまでに時間がかかります。
中国では現在、砂漠化や黄砂の健康被害などの問題から、盛んに植林活動が行われており、造林面積が大きく増加傾向にあります。しかし、もともと乾燥地帯だった場所で、植物の成長に必要な水量が増大するため、逆に水不足などが引き起こされるという問題もあるそうです。
お肌も同様です。一度肌のバリア機能が乱れると元の正常な肌状態に戻るまで2~3年かかる場合があり、肌状態によっては急にワセリンだけのスキンケアにすることが難しい場合も多くあります。
洗顔方法や保湿方法をその時の肌状態に合わせて徐々に変えながら長い目で経過を見ていくことが必要です。
現在、土壌の劣化などの環境問題から、土壌を耕さない不耕地農法が注目されています。
土地を過剰に耕さず、微生物を大切にする農業には、大気中の二酸化炭素を地中に閉じ込め、温暖化を食い止める力があると言われています。
土壌を長年研究している森林総合研究所主任研究員の藤井一至さんによると、腐植土のような自然にある肥沃な土壌を人工的につくることはとても難しく、高度に発展した現代の科学技術を結集しても未だに複雑すぎて化学構造も一部しかわかっていないのだそうです。
私たちも自然の一部だと考えると、肌荒れをしたときに、今本当に大切なものは何なのか、少し立ち止まって考えるきっかけになるのではないでしょうか。
参考文献
- 砂漠化と緑化の現状/浅見和弘
- 環境省 砂漠化する地球
- 土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて (著)藤井 一至 光文社新書 2018