5月26日~27日、日本美容外科学会に参加しました。
久し振りのリアル対面学会
コロナ禍を忘れるくらい大盛況で驚きました。
ちょっと怖いくらい密でした。
私の恩師、宇津木龍一先生は、フェイスリスト(顔の若返り手術)が専門です。
私も勤務医の頃は、フェイスリフト手術の助手として経験を積みました。
耳の周囲から頭皮にかけて、ズバーッと皮膚を切開し、筋膜を引き剥がして引っ張り上げるというダイナミックな手術です。手術翌日は、みんな同じ顔になるくらいパンパンにお月様のように腫れあがります。
手術を受ける患者さんは、若くて40歳くらいから上は70代くらいでしたでしょうか。
目的は「若返ること」でした。
時代は流れ・・・
学会発表していた某先生のクリニックでは、ナント20~30代の患者が一番多いというのです。
フェイスリフトですよ!!
なんで20代で若返んなきゃいけないのよって思いませんか。
20代の若い子たちの悩みの一つが「小顔になりたい」こと。
小顔になるために、顔の骨を削る手術を受けているようです。海を渡った美容大国まで足を運んで、「骨切り3点セット」なるものを受けて来るようです。
骨を切ったら、顔の土台が小さくなるので、程度によってはたるみが生じますね。
「骨を削ったら顔がたるんだ」ということになります。
そしてフェイスリフト手術を受けに美容クリニックを再び受診します。
骨を削って、顔の皮膚を剥がして引っ張り上げて、、、
その先に何を求めて手術を受けるのでしょうか。
少しでも可愛くなって、いい男を捕まえたいのでしょうか。
自分好みの顔に作り直して、自信を持ちたいのでしょうか。
骨切りやフェイスリフトだけではなく、目を大きくしたり、鼻の形を整えたり、唇を厚くしてみたり、額を丸くしたり、造作を変える手術はきりがありません。
鼻を高くするためにヒアルロン酸注入が行われています。軟骨やシリコンを入れる手術より手軽だからです。しかしながらシャープな形づくりが難しいことと、血管塞栓による壊死や失明のリスクが高いことから、医師の間でも微妙な評価です。私には鼻に入れるヒアルロン酸が不自然に見えますし、リスクが怖いので、当院では治療メニューにありません。
最近は鼻に糸入れて、高くしたり、小鼻縮小することが行われているようです。
糸による引き上げ治療は、「スレッドリフト」と呼びますが、ここ数年で急激に症例数が増えています。
某大手チェーン美容外科では、2017年に1000例程度だったのが、2020年には12000例を超えたと言っていました。
3年で12倍です。
皮膚を切らずに糸で手軽にリフトアップという印象を植え付けているようですが、清潔操作で行う立派な外科手術です。
フェイスリフト手術に熟練した医師が行うべき治療だと思います。
顔には豊富な血管と神経が走行し、手術をするにはリスクが付きまといます。
また、表情筋が複雑に走行しているので、表情が動くと「あれれ?」と違和感のあるお顔になることもあります。
手をかければかけるほど、皮下組織は瘢痕化し、硬く突っ張った不自然さが出てしまいます。
いわゆる「いじった」顔です。
今可愛くなりたいからという衝動で、このようなリスクを犯して、若い頃からどんどんお顔を改造して、違和感のある顔になって・・・
やり過ぎ注意報
顔を変えれば人生好転するほど甘くはありません。
刹那的美容医療とでもいいましょうか。
具体的な数字は分かりませんが、刹那的美容医療を求める若い人が増えているような印象を受けた2021年学会でした。
インスタなどのSNSで美容医療がより身近に感じられるようになった影響は大きいと思います。
私の理想とする美容医療は、加齢による肌の衰えを、極めて安全な方法で回復・維持させることです。
そもそも対象年齢が40代以降です。※最近は30代も増えています。
ポイントは“極めて安全”な治療を選択すること。
なるべくリスクは避け、かつ効果のある治療を提供します。
そうすることで安心して治療を受けていただきたいと思っています。
「身体髪膚之を父母に受くあえて毀傷せざるは考の始めなり」
人の身体はすべて父母から恵まれたものであるから、傷つけないようにするのが孝行の始めである。
容姿は個性。
心を磨いて、人間性を高めれば、自ずと魅力的な表情になると思います。