院長ブログ

老い

今月の100分de名著は、フランスの哲学者ボーヴォワールの『老い』を、社会学者の上野千鶴子さんが解説していました。

アンチエイジング美容医療をやっている私にとって、『老い』というものはいつも身近にあり、深く考えさせられるテーマです。

20年以上美容医療をやっていますと、当然ですが患者さんも私も年をとります。

40代だった人は60代になり、50代だった人は70代になり、一人ひとりの患者さんの人生と老いに寄り添いながら、確実に『老い』を意識させられました。

3年前に母が病気になってから、より一層『老い』について考えるようになりました。

 

ボーヴォワールの主張は、「老いは個人の問題ではなく社会の問題である」ということです。

老いとは個人が努力で克服するものではなく、社会の問題であり、文明の問題であると言っています。

変化の早い消費社会において老人は「廃品」として扱われていると述べています。

アメリカの人類学者、ドナルド・カウギルは、変化が速い社会ほど老人の地位が低いと言います。

「若々しいですね」という誉め言葉は、若さに価値があるということ。古さの価値が否定される、変化の早い現代ならではの誉め言葉ということになります。

私は若々しさを求め、そのお手伝いをする仕事をしていますが、若いという意味には、「生き生きとしている」「前向き」「元気」「魅力的」といった意味での称賛があるのだと思います。相対的に若々しいということ。古さを否定しているとは考えていません。

 

さて今日は、年に2回の母の病院受診に付き添いました。

1人で受診できるカラダではありません。

受付をして、検査・診察を終え、お会計が済むまでに5時間弱かかりました。

私の自宅から母の家まで車で1時間ほどかかります。

行きと帰りの往復に車を運転すること4時間。

1日がかりです。

ペチャクチャおしゃべりするだけでも刺激になるだろうし、ちょっとは親孝行になればいいかなと自分に言い聞かせながらも、どこか責任感のようなものに突き動かされて行動している自分に、真の親孝行にはなっていないと、嫌な部分を感じてしまいます。

お許しください、仏様

 

夜8時過ぎに帰宅。

愛犬の熱烈なお出迎え。彼女は嬉しすぎて興奮のあまりおしっこをチビリます

しかも、今夜は私のベッド上に・・・

仕事が増えるじゃろうが

粗相を片付け、餌をやり、ホッと一息。

テレビをつけると、アマゾン創業者が人類初“民間宇宙旅行成功”のニュースが

ちょっとだけ「え!凄くない?」と感じたのは事実。

『老い』と終日向き合った私にとっては、絵空事のように思えました。

ていうか、ロケット飛ばすのにどんだけエネルギー消費して、CO2出しまくるの

エコとかエシカルとかSDGSとか言っちゃって、宇宙旅行??

地球を大切に守らなきゃならないのに、地球を見捨てて人類は宇宙ステーションに移住するのでしょうか。

かつてヨーロッパの人たちがアメリカ大陸を目指したように。

そして宇宙に住めるようなカラダを作るために、我々ホモサピエンスは遺伝子組み換えが行われ、もはや人間でなく違う生命体に進化(?)するのでしょうか。

 

高齢社会となり、ケアの必要な高齢者が沢山いる一方、科学の進歩により宇宙旅行まで可能になった現代社会。

私たちはどこを目指しているのでしょうか。