世の中には様々な洗顔方法があふれています。最近、院内で話題になったことの一つに朝の石鹸洗顔があります。NHKのある番組で朝晩石鹸洗顔を行うことを推奨しており、その内容から改めて肌の構造と石鹸の必要性について考えました。
肌の潤いを左右する要素は3つあります。①天然保湿因子②細胞間脂質③皮脂膜です。
①天然保湿因子:約半分がアミノ酸でできており、これはうるおいの素となります。
②細胞間脂質:セラミドやコレステロールなどの成分が含まれ、肌の中の水分を留める役割を果たします。
③皮脂膜:肌表面の水分の蒸散を防ぎます。
こうした自らが元々持つ保湿因子は、どんな化粧品にもまねできない素晴らしい保湿力を備えています。なぜなら、全ての成分が絶妙なバランスを保ち、外から手を加えなくともすでに完成されているからです。例えば、細胞間脂質に含まれるセラミドを観察すると、1種類ではなく様々な種類のセラミドがちょうどよく配置されています。この構造は1種類や2種類のセラミドを配合しただけの化粧品では作り出せません。ちなみに、化粧品が浸透しやすい層は角質層のみで、その厚さは平均0.02mmほどです。
洗顔について考えると、特に落とすべきものは皮脂が酸化してできた過酸化脂質です。酸化された皮脂は細胞のDNAを傷つけ、シミ・しわ・たるみ等の原因になると考えられます。では、石鹸を使って落とすべきなのでしょうか。ファンデーションやクリームなど油性の化粧品を使用していなければ、皮脂由来の過酸化脂質は水溶性なので、水洗いで十分に落とすことができると考えます。逆に、クレンジング剤や石鹸で洗いすぎたり、熱いお湯で洗っていると、先程紹介した肌に本来備わっている保湿因子が壊されて乾燥肌となってしまいます。そのため、肌断食を推奨する当院では、水洗顔やぬるま湯洗顔をおすすめしております。
しかし、水やぬるま湯洗顔だけでは肌が整わない方がいらっしゃることも事実です。今はマスクをつけている時間が長かったり、湿度や温度が高く、皮脂が出やすく、赤みやかゆみが起こりやすい時期となっています。また、お化粧品を使っている方は化粧品に含まれる油性成分が水洗顔だけでは落とし切れません。こうした場合には、適宜石鹸を使っての洗顔を行うことも大切です。その際にお伝えしていることは、1日活動して過酸化脂質の一番たまった夜に石鹸洗顔を行うことです。肌本来の保湿因子を取りすぎないために、最低限の使用にとどめます。ですので、基本的には朝の石鹸洗顔は必要ないといえます。時間としては、洗いが20秒、すすぎで1分以内です。
ここまで、肌の持つ3つの保湿因子と洗顔の関係について書いてきましたが、院長から以前「スキンケアに絶対はない」と教わりました。自分が心地よく過ごせることが大切であり、化粧品を使うことが好きで気に入っているならば、それはその人のスタイルで否定はできません。確かに心地よさの基準は人それぞれで、年齢、性別、環境等によっても変わってくるためスキンケアに「絶対」は難しいのかもしれません。しかし、そうであったとしても本質を見極めたケアを大事にしていきたいと感じます。
参考文献:宇津木龍一(2012)『肌の悩みがすべて消えるたった1つの方法』青春出版
ファンデーションに頼らない素肌づくり
白金ビューティフルエイジングクリニック
クーラーのいらない日々が待ち遠しいKarenでした。