院長ブログ

これからの成長を考える

戦後、日本は目覚ましい経済成長を遂げました。

1950年は世界のGDPが5.3兆ドルに対して日本の占める割合は3%でした。

1994年に日本のシェアがピークとなり、17.9%。

その後失われた30年の間にどんどん縮小し、2021年にはなんと5%まで低下してしまいました(世界GDPは96.3兆ドル!)

ちなみに2000年頃は日本と米国と英国のGDP合計が世界の約半分を占めていたのが、20年後の今では約1/3に減少したそうです。相対的にアジア勢力の力が強まったということです。

国の豊かさはお金だけで測るものではないと思いますが、「GDPは創出付加価値の総和であり、汗をかき経済活動をする総体を捉える概念」と寺島実郎氏は述べており、それに関しては私も納得しています。

終戦後、焼け野原で何もかも失った日本人が、豊かさを求めて必死に頑張ったのですぅぅぅ

人は何かやり遂げたいという情熱と、頑張れば良い未来が待っているという期待が持てるからこそアクセルを踏んで前に進めます

しかしながら、社会全体がある程度物質的に豊かになったことで、休みもなくモーレツに働く会社員の馬車馬人生に疑問を感じる人が増えたのではないでしょうか。

子供のころからある程度満たされた状態で育っていれば、そんなにガツガツしなくたっていいでしょ、と考えるのも自然の流れなのでしょう。

そして世の中がどんどん便利になっているから、人間易きに流れてしまいます。

ゆとり教育だの働き方改革だの叫ばれていますが、それは単に安易な方向に流されているだけのような気がしてなりません。

「まあそこそこテキトーに生きましょうよ。美味しいもの食べて、楽しいことができればそれで満足。辛い仕事なんてやる気ないし。政治経済は誰か頭のいい人たちがやってくれるでしょ。」これが日本人マジョリティーの民意だとしたら、私はとても悲しい

 

そういう私自身も、何だか最近テキトーに生きているなぁと感じることが増えました。

子育てが終わって暇になったからかなぁ。

嫌なことはやりたくないし。

眠たければ寝たいし。

診療は好きだけれど、そんなにガツガツやらんでもええんちゃう?(←エセ関西弁)

・・・なんて思うと、ありゃ?これぞ現代日本人を蝕む精神そのものではありませんか??

 

美容医療で何とか成功したい気持ちが強かった若かりし頃は、あれこれ必死にチャレンジしていました。自分で言うのもなんですが、まあいろんなことに手を出して、ときどき火傷しながらも何とか生き延びてきたもんです。成功の定義も難しいのですが、単純にたくさんの患者さんに来院してもらって、予約一杯になり、治療結果に満足してもらって、売上も上がっていくというようなことをイメージしていたのだと思います。

40代後半になると、開業という枠組みの中では、自分が出来る範囲のことはやった、ある程度結果も出せた、と思えるようになりました。すると今までのように右肩上がりの成長だけ望むことに違和感を覚え始めたのです。追い求めているものが違うとでもいいましょうか。でも、何を求めているのか自分でもよく分からないのです。

あれ?これって、私自身が今の日本社会の縮図そのものではありませんか

ある程度目標達成した後のユートピアが描き出せずにいるのです。

自分の人生を振り返っても、若い頃は成長を続けて、40代後半から停滞・・・という流れは、日本社会と非常によく似ています。これを放っておいて易きに流れ続けていたら、衰退の一途を辿ることは間違いないと思うのです。

 

先日、いつもお世話になっている白金の美味しいケーキ屋さんのケーキを食べながら、「もしケーキ屋さんたちが努力しなくなって、ケーキがどんどん不味くなってしまったら、私はとても悲しい そんなの嫌だ。」と思いました。美味しいケーキを作り続けるには、人々の不断の努力が必須です。日本人が努力することを放棄するということは、一流のモノやサービスを諦めることになりませんか?私はそんなの絶対に嫌だと思いました。

時刻表通りに出発する電車、清潔な公共設備、夜道でも女性一人で歩ける安心な街、落とし物が届けられる社会。

日本には世界と比較しても良いところがたくさんあります。それを失っても構わないと思っている人がたくさんいるのでしょうか。

戦後77年、この国は、世界は大きく変わりました。

今までの資本主義社会は限界に来ています。

GDPだけ追いかけるのは何か変。

新しく目指すべき社会の姿ってどんなものなんでしょうか。

脱成長?倫理資本主義?

世界中の哲学者や経済学者など有識者が議論を繰り返していますが、そんなに単純なものではなさそうです。

私自身が初老になり、これからの当院の目指すべき姿を考えることが、日本の在り方を考えることと重なることに気付きました。

まだ結論は出ませんが、若い人が夢を持って活躍できる社会(クリニック)にすることではなかろうか?という大雑把なイメージを持っています。

GDPが全てとは思いませんが、それに代わる基準が示せない以上、やはりGDPを捨てる勇気はなく、「誠意をもって価値ある仕事をしましょうよ」と言うのを今夜の結論にして終わりたいと思います。