院長ブログ

クリニックのお仕事

ワキ汗による経済損失

6月にして梅雨明け、猛暑到来です。

「最高気温は35℃です」という天気予報を耳にすると、

あ~、患者さんたちはこの暑さの中でのご来院は大変だろうな、と心配になってしまいます。

「お暑い中お越しいただいて、お身体は大丈夫ですか?」と尋ねると、

「ここ(当院)に来るのが楽しみで、暑さなんて吹っ飛びますよ」なんて言われると、私まで暑さを味方に付けられそうな気がします。

 

気温上昇と比例するかのように増える「汗」

4月から7月頃まで集中して増える治療が『エチケットボトックス』です。

ワキ汗を抑える注射治療です。

当院で治療を受ける方のほとんどは「ワキがサラサラになって感動です」と喜んで下さいます。

そして毎年1回リピートする治療です。

緊張により一時的にどっと汗をかく精神性発汗の方は、年に2回治療を受けます。

 

ワキ汗による経済損失は1日3,120億円だとか。

日経新聞の1面を使った大々的な広告が目に留まりました。(科研製薬株式会社)

20人に1人が原発性腋窩多汗症(他の病気や障害がなくワキにたくさん汗をかくこと)に悩まされているとのこと。

ワキ汗が気になって、仕事のパフォーマンスが30%低下するとの研究データもあるとか。

衣服が汗によって変色したり、においが気になったり、人目が気になったり・・・

そのような悩みは、ボトックス注射により劇的に改善されます。

副作用もほとんどありませんが、たまに「ワキ以外のところ(前胸部や首、背中)からの汗が増えたような気がします」と仰る方がいます。

 

猛暑を乗り切る1つの手段として、エチケットボトックスを紹介しました。

ワキ汗が気になる方は、お気軽にスタッフまでお声がけ下さいませ。

 

 

 

美容外科学会の“美”とは?

久し振りの学会参加。

コロナ禍で浦島花子になりかけていた私には、適度に刺激となりました。

学会参加者数は過去最大とのことで、超三蜜会場の人混みに、美容医療への関心の高さを感じずにはいられません

20~30代の若いドクターが増え、美容医療は人気の職業になったのでしょうか。

患者さんの美容医療に対する心理的ハードルは格段と下がったようで、市場規模としてこの1年で10%拡大していると聞きました。コロナによる不況なんてどこ吹く風?です。

大手美容外科や有名な医師が、SNSなどで治療を拡散している影響なのでしょうか。

 

日本美容外科学会ですが、日本には同じ名前の学会が2つあります。

①開業医が中心となって活動してる学会

②大学の形成外科医が中心となって活動してる学会

今回は①の学会でした。

①の学会は商売色がムンムン感じられるムードですが、コロナ前に比べるといささか大人しくなった印象です。

以前はド派手な懇親会会場に、モデルのようなイケメンがホストのようにお酒を配ったり、高級スポーツカーが展示されていたりと、美容外科医からお金を吸い上げようとしているのか?と疑いたくなるような雰囲気でした。

参加者はドクターだけではないと思うのですが、水商売と見間違えるようなけばけばしい人たちがウロウロしていたことを思い出します。

それに比べれば、随分と地味になったように感じたのは、外見を派手に見せるような見栄っ張り行為に若い人達が共感しなくなっているせいかなぁ、などと考えてみたり。

そして、学会中の質疑応答が極端に少なくなったことも気になりました。

元気がないんですよね。

他の医師たちがどんな治療をしているのか、どういう工夫をしているのか。

そういう情報交換の場であって欲しいのに、本当に「しら~」っと静まり返っているのです。

医師がこんな様子で、本当にこの業界は盛り上がっているのかいと、少し心配になりました。

一部のやる気ある医師たちが牽引しているのは間違いないと思いますが、業界全体としてのエネルギー量が低下しているように感じました。

 

そんな中でも素晴らしい技術を持っていらっしゃる先生のライブサージェリーや、

治療の工夫、新たな気付きなどを発表されている先生方のお話に触れ、

私の浦島脳も少しは刺激を受け、思考の整理が出来たように思います。

 

1990年代後半、虜になった美容外科。

あれほどまでに恋焦がれ、やっとの思いで足を踏み入れることができたこの世界。

20年以上臨床の場で診療を続けることで、いろいろ気づき、いろいろ考え、自分の理想とする美容医療の在り方も紆余曲折でした。

ゴールデンプロポーションに近づけるよう顔の形や輪郭を整えるために、ヒアルロン酸注入をしたり、小顔ボトックスしたり、フェイスリフト手術をしたり、鼻を高くしたり、小鼻を縮小したり、目を二重にしてみたり、鼻と口の距離を短くするために人中短縮してみたり、美容医療の度は果てしなく続きます。学会ではそれらの技法について発表し、学びます。

肌の質感を高め、ハリを出すために、HIFUやピコレーザー、ダーマペンといった『機器』がもてはやされ、「どの機器が良いのですか?」という質問が飛び交います。

ずば抜けて効果的な機器などなく、施術者がどのように治療するかによって効果は変わります。

「美しくなりたい」と一言でまとめても、美の基準がまちまちですし、望む美のレベルも千差万別です。

小さなシミ1つ消し去りたいという美肌オタクの人もいれば、「そんなにキレイにならなくてもいいんです」という謙虚な方もいらっしゃいます。

私たち医療従事者は、自分の感性を押し付けることなく、1人ひとりのニーズを察知し、過不足なく提供してこそ、求められるクリニックでいられるのだと考えています。

 

気になるシミがとれて、明るい肌色になった!

ちょっとハリが出て、お肌がモチモチになった!

というような軽微な変化でも、人の気持ちはグンと前向きに明るくなるものです。

私は、そんな美容医療を心地よく感じています。

 

美容皮膚科で叶える効果はほどんど無いに等しいと言い切る美容外科の先生もいます。

そのように考えるドクターは、派手な変化を好みますから、「私、整形しました」のような変化を出す治療をします。

造作を変えてしまうような美容外科に違和感があり、それは私が求める『美』とは違うと自覚し始めたのはいつの頃でしょうか。

私も20代の頃は鼻を整形したいとか、年を取ったらフェイスリフトやらなくっちゃ!なんて真剣に考えたものですが

50代になって、人生の酸いも甘いも嚙み分けるようになった今は、手術までしなくてもいいか、と思えるようになりました。

そう、こうやって人は変わります。

女優の黒木瞳さんが、ご自身の出演した映画の中で、

「若い子には負ければいい」というセリフがお気に入りだとか。

映画の原作者内館牧子さんが書いたセリフ。

「時代は動くから、いつまでも同じところにはたっていられない、若い人には負ければいい、それが人としての品性なんだという。だから年齢を重ねれば重ねるほど、若作りしてもおかしいだけで、受け入れればいい。」

同感。

 

最近は30歳前後から肌の老化を気にする人が増えたように思います。

若い時の勢いで、不可逆的な変化をもたらす美容医療を刹那的に受けることは断固反対

時には止める医師も必要だと思い、もっと本質的なことに目を向け努力できる人間性を養って欲しいと願います。

造作美だけではなく、それを得た先に何があるのか?を考える時代になってきました。

当院では、人生を豊かにする優しい美容医療を提供したいと思います。

 

ルビーレーザー考察

バイデン大統領が訪日。

昨夜は白金台の八芳園で夕食会があった影響で、クリニック周囲は見たことのないような厳戒態勢

ものすごい数の警察官が配備されており、また野次馬さんたちでしょうか、交差点付近では人々の群れが目を引きました。

コロナ禍が長引き、なかなか見慣れない光景にドキドキしながら車で帰宅。

来年のG7サミットは広島で開かれるようですね。

戦争や気候変動など問題山積の世界情勢ですが、1年後はどうなっているのでしょうか。

 

さて、最近の診療での気付きについて。

冬にシミ取り治療(ルビーレーザー)を受けた患者さんの経過観察をしています。

昨シーズンは新調したルビーレーザーで治療しましたので、その効果が気になるところです。

跡形もなくきれ~いにシミが取れることもあれば、

一度で取り切れず一部残存することもあります。

あららら・・・The 色素沈着ですね・・・というようなことも

残念ながら我々日本人は30~40%の確率で色素沈着が起こり、一度黒ずんでしまうと薄くなるまでに6~12か月ほどかかることも。

完全に予測することはできませんので、内服・外用剤でフォローしながら1年くらい様子を見ています。

大きく目立つシミは、メラニン色素を作る勢いがありますので、一度で取り切れず2~3回の治療が必要なことも。

 

【シミ取りレーザーについてよくある質問】

Q:「一度に取った方が良いのでしょうか、それとも少しずつですか?」

A:「慎重で痛がり、怖がりの人は、少しずつ治療したほうがいいと思います。まずは小さいシミを1~2個治療してみましょう。せっかちで大胆な人は、思い切って一度にたくさん治療をしてもよいと思います。一気に取れてすっきりとしますよ。」

 

ルビーレーザーは皮膚に火傷を起こしますので、血が出たりカサブタになったりダウンタイムのある治療です。

火傷ですから、当然痛みを伴います。

事前麻酔をするので、照射中の痛みは軽減できるものの、麻酔を使っても痛がる人もたまにいます。

シミが大きければたくさんのショット数が必要であり、30ショット以上当てると、術後にひりひりとした痛みが続きます。普通は1~2時間程度で治まるのですが、よくよく話を聞いてみると、痛みの感じ方はかなり個人差があることが分かりました。

「治療当日の夜はずっと痛みが続きました」と言う人もいれば、

「治療直後から痛みはまったく気になりませんでした」と言う人も。

麻酔なしで100ショット以上当てられる強者もいれば、

数ショットだけでもキャーキャー痛みを訴える人も。

また術後にこげ茶色のカサブタが形成されますが、黒々したカサブタを見て気分が落ち込む人もいます。

家族にびっくりされて、その反応に滅入ってしまう人もいます。

予想されることは全てしつこいくらい説明をしているつもりですが、やはり経験しないと分からないのが現実。

 

患者さんの性格によって、治療の進め方、説明の仕方に工夫が必要です。

ルビーレーザーはシミ治療の定番であり、肌を入れ替えることで一気に新しい皮膚が再生されるため美肌効果もあります。

診察していると、新しいレーザーの効果はなかなか良かったのではないかという印象を受けています

照射エネルギーと照射方法を工夫して、より良い結果を出せるよう、来シーズンに繋げようと思います。

シミがすっきり取れると、本当に気分がいいものです

 

 

 

 

治療満足度

我々美容医療に携わる医療従事者は、

客観的に治療効果を判定することにこだわります。

よって、様々な診断機器というものが存在します。

メラニン色素の数値がどれだけ低下したとか、

肌のキメが改善したとか、

弾力が高まったとか、

シワのスコアが改善したとか、

そんな風に数値化したものにこだわります。

その科学的データを根拠に「医療」が行われています。

これぞEBM(科学的根拠に基づいた医療)

 

と・こ・ろ・が

人の感覚というのは、このデータに比例して動かされないのが事実。

数値が改善することは、説得材料の1つにはなりますが、それだけで患者さんが喜ぶとは限りません。

写真上では明確にシミが薄くなっているにも関わらず、「ほとんど効果を感じません」と言う方もいれば、

客観的に大した変化を認めないにも関わらず、「とても肌がきれいになって大満足です」と喜びを表現する方もいます。

美容に関しては感覚的に捉える部分が多く、理論的に考えるものではないということなのかもしれません。

我々医療従事者は、そのことを十分に理解しておくことで、治療効果を最大限発揮できるのではないかと考えています。

・スタッフがとても気が利いて感じのよい人だった。

・先生が悩みをよく聞いてくれた。

・院内は良い香りだった。

・BGMが心地よかった。

・待たされることなく、受付から会計までスムーズに行われた。

以上のようなことも、治療の満足度にかなり寄与しているのではないかと思います。

治療満足度を高めるためには、多角的なものの見方が必要。

 

とは言え、これでも私は医者の端くれですから、様々な診断機器や画像を利用して、客観的な治療効果が出せるように努めています。治療前後の写真を一緒に見ながら、治療効果を確認するようにしています。

 

ある女性が、「鏡に映る自分に惚れ惚れしちゃいました」さらりと発言。まったく嫌味なく、清々しさすら感じるほどでした。

このように、自分の肌に自信を持てる幸せな女性を増やすことが、私のお仕事だと自覚しています。

1つお願いがあります。

当院で治療を受けたことにより、肌の変化で自慢したいことがあれば、私やスタッフにどんどんお話しして下さい。

ご家族やお友達に褒められたとか、年齢を間違えられたとか、何でもOK

皆様の自慢話こそが、私たちの活力に繋がります。

 

 

 

美容医療との付き合い方

先日受診した友人が、珍しく疲れ切った顔をしていた。

それはマスク越しでもすぐに分かるほど。

「どうした?」

尋ねてみると、仕事のいろいろで疲労困憊ということらしい。

そんな状態でも、美容医療を受けに来ることで、自分を整えているとのこと。

だからこそ毎月通えるらしい。

 

毎月通うことがルーティーンになっている患者さんには、

親の介護で目が離せない人、

癌の治療を受けている人、

仕事が激務で始発や終電生活をしているような人、

病気の家族を世話している人、

離婚調停中の人、

などなど、大変な状況下に置かれている人たちがいる。

それなのに時間を作って白金まで足を運んでいる。

でもそれは頑張っているのではなく、楽しみであり、生き甲斐になっているからこそ、彼女らにとってはごくごく当たり前の生活習慣らしい。

私たちスタッフは気合が入るし、少しでもいい時間を過ごしてもらえるよう、心を寄せる。

 

肌の調子が良くなることは、希望であり夢である。

毎日頑張れるようになるためのエネルギーチャージとも言える。

気分が良くなるための方法の1つなのだろう。

自分の肌状態が精神状態に影響することを自覚しているからすごいと思う。

きれいにしておいて損はないだろう。

 

どの程度医療の介入が、その人にとって快適なのかは千差万別である。

それには一人ひとりの性格を知り、求めているレベルを把握しないと、快適ゾーンに導くことはできない。

それを察知して治療を提案するよう心がけている。

私が診て、「ここの治療をしたら絶対感じの良い人になるのに」と思う部分は、相手がどう思おうと伝えるようにしている。受けるか受けないかを決めるのは患者さんご自身だから、無理強いはしない。ただ伝えるだけ。

鏡を見る時は、無表情で見ることがほとんどなので、周りからどのように見られているか意外と知らない。

造作の美醜より、表情の美醜が見た目に影響していることを、みんな意外と知らない。

造作は遺伝的な影響を受けるので、まあ仕方ない。個性だ。

しかし、表情は自己責任である。

どのように生きているか、何を考えているかが顔に出るからだ。

 

美容医療は、肌を整え、表情を整え、心を整える医療だと思っている。

無理のない範囲で、楽しみながら通えることが美容医療との適切な付き合い方だと思う。